診療科のご案内

乳腺外科

  • 乳腺疾患、特に乳癌の診断と治療を中心に診療しています。
  • 診断視触診、マンモグラフィ、乳腺エコー検査、さらに穿刺細胞診、針生検、マンモトーム生検(乳腺エコー下およびマンモグラフィーを用いたステレオマンモトーム生検)で診断。
  • 治療手術療法と薬物療法。 手術療法:乳房部分切除、乳房切除 センチネルリンパ節生検(不必要な腋窩リンパ節を避けるために全身麻酔下の乳房切除時にOSNA法によるリンパ節転移の検索)を行っています。 形成外科医による乳房同時再建(広背筋皮弁法、インプラント挿入のための拡張器挿入)も実施。
  • 薬物療法抗がん剤による化学療法(術前、術後)、ホルモン療法、分子標的薬を併用した化学療法

診療担当表

  曜日 曜日 曜日 曜日 曜日 曜日
午前 2-3診:小野 2-1診:下村
2-1診:川﨑
2-3診:井上
2-1診:下村
2-3診:島津
2-1診:若宮
2-3診:下村
2-1診:下田(第1,3,5)/直居(第2,4)
2-3診:井上
午後 2-1診:丹治
2-3診:小野
2-1診:川﨑
2-3診:井上
2-1診:下村
2-1診:增永
 
  午前  9:00~12:00(受付 8:30~11:30)
  午後 14:00~16:00(受付 13:00~16:00)
 ※ 土曜日の午後は休診となります.

・乳腺外科は、いずれも日本乳癌学会認定医・専門医の医師よる診療を行っています。

----休診情報 ------------------------------------------

休診情報につきましては、お知らせ欄「休診情報」をご確認ください。

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乳腺外科医師

副院長
部長
下村 淳
平成9年 大阪大学卒業
大阪大学医学博士
日本外科学会専門医・指導医
日本乳癌学会専門医・指導医
がん治療認定医
NPO法人日本乳がん検診精度管理中央機構 検診マンモグラフィ読影認定医師
検診部長 井上 共生
平成2年 弘前大学卒業
大阪大学医学博士
日本外科学会専門医・指導医
日本乳癌学会専門医・指導医
日本消化器外科学会認定医
NPO法人日本乳がん検診精度管理中央機構 検診マンモグラフィ読影認定医師
医員 若宮 志織
平成23年 筑波大学卒業
日本外科学会専門医
NPO法人日本乳がん検診精度管理中央機構 検診マンモグラフィ読影認定医師
医員 川﨑 香
平成25年 大阪市立大学医学部卒業
大阪大学医学博士
日本乳癌学会認定医
日本外科学会専門医
NPO法人日本乳がん検診精度管理中央機構 検診マンモグラフィ読影認定医師
NPO法人日本乳がん検診精度管理中央機構 乳がん検診超音波検査実施・判定医師
緩和ケア研修会修了医
医員 原 恵梨
平成27年 徳島大学医学部卒業
日本乳癌学会認定医
日本外科学会専門医
NPO法人日本乳がん検診精度管理中央機構 検診マンモグラフィ読影認定医師
NPO法人日本乳がん検診精度管理中央機構 乳がん検診超音波検査実施・判定医師
緩和ケア研修会修了医
非常勤 田口 哲也(京都府立医科大学 内分泌・乳腺外科 特任教授)
非常勤 丹治 芳郎(森之宮病院乳腺・内分泌外科 部長)
非常勤 島津 研三(大阪大学大学院医学系研究科乳腺・内分泌外科 教授)
非常勤 直居 靖人(京都府立医科大学 内分泌・乳腺外科学 教授 )
非常勤 下田 雅史(大阪大学大学院医学系研究科乳腺・内分泌外科 助教 )
非常勤 小野 寿子(京都第二赤十字病院 腫瘍内科)
非常勤 西江 優子(関西メディカル病院 乳腺外科)

主に扱う疾患

  • 乳腺疾患 
  • 良性疾患乳腺症、線維腺腫、乳腺嚢胞、乳腺炎、葉状腫瘍
  • 悪性疾患乳癌

乳がんとは

乳房は出産後に授乳をするために乳汁を分泌する役割を持つ重要な器官です。乳房はおもに乳腺組織と脂肪組織とから構成されており、この乳腺組織(「乳腺」)の中で乳汁が産生され乳頭へ運ばれます。
乳腺組織は15〜20の「腺葉(せんよう)」という部分に分かれており乳頭を中心に放射状に並んでおります。それぞれの腺葉はさらに多くの「小葉(しょうよう)」という部分に枝分かれしています。 そして小葉も小さな「腺房(せんぼう)」というものが集まってできおり、この腺房で乳汁が作られているのです。 腺房で作られた乳汁は「乳管(にゅうかん)」に入って小葉や腺房へと合流しながら集められて最終的に各腺葉から1本ずつの「主乳管(しゅにゅうかん)」となって乳頭(乳首)に達します。
乳がんはこの乳管や小葉の内腔(内側)の細胞(上皮(じょうひ)細胞)から発生します。乳管から発生するものを「乳管がん」といいこれが乳がんの多くを占めます。 小葉から発生するものを「小葉がん」といいます。がん細胞が乳管や小葉の中にとどまっているものを非浸潤(ひしんじゅん)がん、乳管や小葉を包む基底膜(きていまく)というものを破って外に出ているものを浸潤(しんじゅん)がんといいます。
乳がんは他のがんとくらべて悪性度が低い方だとされています。よって乳がん全体としてはおとなしいものが多いと言えるのですが、中には増殖能力が高く、転移や再発を起こしやすいものもあります。

乳がんの疫学(えきがく)

乳がんの年間罹患(りかん)数は8万人を超え9万人に達しようとしており、日本人女性のがんのなかで最も多く、また年々増加し続けております。 女性の12人に1人が一生涯のうちに乳がんを発症すると言われています。 また日本人の乳がんの好発年齢は40歳-50歳であり子育てや仕事と社会的に見ても最も活動すべき年代に当たっています。

乳がんの症状

乳房のしこり(腫瘤(しゅりゅう))

乳がんの約9割がしこりで発見されると言われています。乳がんのしこりのほとんどは痛みを伴いませんが、まれに痛みを伴う場合もあります。 しこりがあっても(あるいはしこりを感じても)すべてが乳がんというわけではなく、良性の乳腺症や乳腺線維腺腫などの場合もよくあります。 良性のしこりは弾力があり境界がはっきりしており動きやすいという性質を持つのにくらべ、乳がんのしこりは固く、周囲の正常部分との境界がわかりにくく、手で触っても動きにくいというような性質を示します。 ただしそれだけでは良性悪性の判定はつかないこともしばしばあります。しこりが気になる場合は受診することをおすすめします。

乳頭からの血性分泌

妊娠や授乳期以外に乳頭から見られる分泌を乳頭異常分泌といいます。その原因には内科的な病気(内分泌疾患)や薬によるもの、乳腺の炎症や乳腺症によるものなど、様々なものがありますが、 乳がんが原因である場合もあります。特に分泌物が血性(血液の赤色、あるいは変化した黒色)の場合の20~30%が乳がんによるものといわれています。特に片側の1か所だけからの分泌の場合は要注意であり受診をすすめます。

皮膚の異常(えくぼ症状、など)や乳頭の変化

乳がんが乳房の皮膚の近くに存在すると、それが皮膚を内側に引っ張ることにより皮膚に小さなへこみを作ります。これをえくぼ症状と言います。 あるいはしこりがないのに乳輪や乳頭の皮膚に湿疹が出たり、ただれたような変化(びらん)が起きたりして調べてみると乳がんの1種である「パジェット病」と判明する場合があります。 または、「炎症性乳がん」といいしこりがないのに乳房の皮膚がむくんでみかんやオレンジの皮(橙皮(とうひ)様皮膚)のように毛穴が目立つようになったり、赤くなったり熱を持ったようになったりという症状を呈する乳がんもあります。 乳頭の変化には、腫瘍が存在する方向に乳頭が引っ張られるポインティング症状や、乳頭の直下や近傍にある腫瘍に引っ張られることによりおこる乳頭陥没(陥凹)、などがあります。 あるいは乳がんが乳腺の中で広範囲に拡がり乳房が萎縮して持ち上がり乳頭の高さが左右対称でなくなる(左右非対称)こともあります。

腋窩(えきか)(腋(わき)の下)のしこり

腋の下には乳がんに関係の深いリンパ節があります。乳がんが進行するとこのリンパ節(腋窩リンパ節)が腫れてきます。 (まれではありますが、乳がんのしこりが見つからないのに腋窩リンパ節に乳がんの細胞が見つかる‘オカルト乳癌’というものもあります。)ですので、腋窩のリンパ節を確認しておくことも乳癌の発見につながる場合があります。

痛み(乳房痛)について

痛みは乳房にはよくある症状ですが、おもに乳腺症や乳腺炎など良性の病変によるものであり、痛みがおもな症状である乳がんというのはまれであるといえます。 よって上に挙げました痛み以外の症状がないかをまず見ていただきたいと思います。ただし思い込みで発見が遅くなる様な場合もないとは言えませんので、 もし何か変だなと感じることがあれば迷わず乳腺の専門医の受診を受けていただくことをすすめます。

自己検診

目で見るチェック
  • ① 鏡の前で、腕を頭の後ろで組み、乳房のひきつれ、くぼみ、乳輪の変化、乳首の凹み、湿疹、皮膚の変色、乳房の大きさや位置に左右差がないかなどをチェックする。
  • ② 腕を腰に当てて、乳房のしこりやくぼみ、乳頭のかさぶたやただれがないかもチェックする。
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手で触るチェック
  • ① 4本の指をそろえて、指の腹と肋骨で乳房を挟むようにして、10円玉大の「の」の字を描くように指を動かしながらチェックする。
    腕をあげ、乳房のしこりや凹凸、わきの下の腫れやしこり、以前より硬くないか、全体に違和感がないかなど、わきの下から乳首まで左右ともチェックする。
    あおむけで行う場合も触る方の腕を上げて、逆側の手で触る。
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  • ② 乳房や乳首を指先で搾るようにして、乳首から分泌物が出ないかを調べる。
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受診の方法

自覚症状がない場合

特に自覚する症状がない場合で異常がないかを調べるのは乳癌検診(住民検診など)です。当院は豊中市の乳癌検診指定施設です。申込み方法については豊中市のホームページなどでご確認ください。また、自費診療での検診も受け付けております。

症状がある場合、または既に異常を指摘をされている場合

検診ではなく診療となります。
当院では症状にあわせて診療をすすめますが、検査の方法としてはまず 問診・視診/触診・マンモグラフィ・乳腺エコーなどを行い調べます。
悪性が疑われる、あるいは良性悪性の判断がむずかしい病変についてはさらに乳房MRIや、病変から細胞を採取する細胞診(穿刺吸引細胞診)、 組織を採取する針生検(コアニードルバイオプシー、乳腺画像ガイド下吸引針生検(エコーガイド下マンモトーム、ステレオガイド下マンモトーム))などを行います。

問診

しこりや皮膚の異常、あるいは乳頭の分泌などの症状がいつ頃からどのように出てきたのかなどはその病変が良性なのか悪性なのかを考えるのに重要な手がかりとなります。 また、いろいろながんでもそうですが、乳がんの原因にも、体質的なもの(遺伝的要因)とライフスタイルによるもの(環境的要因)があります。これらをお聞きすることは診断や治療の重要な手がかりとなります。 たとえば家族や親戚に乳がんになった方がおられるか、またおられた場合にかかられたときの年齢なども重要な手がかりです。また、乳がんはエストロゲンという女性ホルモンとは深い関係があります。 よって初潮時の年齢、閉経時の年齢、出産歴があるかどうか、発出産時の年齢、授乳歴なども問診させていただいています。

視診/触診

しこりは乳がんの症状としては最も多いため触診でしこりの有無やしこりの性状(大きさ、形、硬さ、表面の性状、周囲との境界、動きやすさ)を診察します。 形がきれいな丸である、表面がなめらか、境界がはっきりしている、などは良性の場合の所見ですが、そうでない場合は悪性を疑ってかかります。 ただし、まるで良性のような所見を持つ悪性の場合(その逆もあります。)もあるので下にあげるような検査を行って確認、診断します。

マンモグラフィ

マンモグラフィで描出されるおもなものはしこりと石灰化です。まずしこりの有無を調べたり、しこりの良悪を推定したりします。あるいはしこりとはっきり言えないまでも、反対側とくらべると濃く写る部分があるという場合もあります。 そして石灰化も重要な所見です。石灰化とは具体的にはカルシウム成分の沈着で何か背景に原因がありその結果として起こってくるものです。 乳腺は石灰化が起こりやすく検診などではよく発見されますが、ほとんどが良性の背景をもつ問題がないものです。しかし、乳がんが存在している場所に発生してくる石灰化もあり良性悪性の鑑別が重要となります。 形、大きさ、存在範囲、背景の他の所見などを見て判断することになります。またしこりや石灰化以外の所見が重要になることもあります。 はっきりとしたしこりは作らないけれども乳腺が広い範囲でおかされ収縮しているような場合は左右非対称で発見されることもありますし、部分的な歪みで発見される場合もあります。 皮膚に広がってくるものはマンモグラフィに写る皮膚が厚くなってきたりします。

乳腺エコー(乳腺超音波)

超音波を組織に当て、その反射を画像化して見る検査であり、マンモグラフィと比べると石灰化のみで検出されるような乳がんは描出がむずかしいこともありますが、 乳がんやその他の腫瘍の内部やその周囲との境界の性状を描出できるといった利点があります。

病理学的検査

細胞診(穿刺吸引細胞診、乳頭分泌液細胞診)

しこりが腫瘍である可能性がある場合、良性か悪性か診断をしないといけません。そのためにはしこりの内部の細胞や組織を採取して顕微鏡で診断する病理学的検査というものを行います。 病理学的検査には細胞診と組織診とがあるのですが、細胞診とは乳腺の組織から離れてばらばらになった細胞を顕微鏡でみるものです。 採血で刺すときのような細い針を腫瘍の内部に刺し、吸引をかけて細胞を採取しますので穿刺吸引細胞診といいます。 しこりがかなり大きめの場合は別ですが、大抵の場合は超音波で針先がしこりの内部に入っていることを確認しながら吸引をかけます。 また、乳頭分泌が見られる場合は分泌液に悪性性の細胞がないか液をプレパラートにとり顕微鏡で見ます。

組織診(針生検(コアニードルバイオプシー)、吸引針生検(マンモトーム))

組織診とは乳腺の組織内に存在している状態にできるだけ近い形で組織を切り取ってきて顕微鏡でみるものです。 通常しこりの良性悪性を診断する目的ではコアニードルバイオプシーを使用することが多いのですが、腫瘍の性状などによっては吸引をかけながら組織を採取する吸引針生検を使用する場合もあります。 吸引針生検の方が針が大きめである分採取できる組織も多くとることができるので、乳がんが判明しており治療方針を決めるために複数個の組織片を採って乳がんの性質を見る検査まで行う必要がある場合にも使用します。
これらの検査を行う場合は必ず超音波で針先としこりを確認しながら安全に行います。

これらの検査により乳がんと診断がついたら治療方針を決めるために乳がんのステージ(病期)の分類や乳がんのタイプ(サブタイプ)の診断も行います。
ステージは乳がんのしこりの大きさ、腋窩リンパ節など領域リンパ節に転移がないかどうか、他の臓器に転移がないかどうかを調べて分類します。  
以上の検査を使用して診断および手術までの流れをまとめると以下の図ようになります。

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