診療科のご案内

泌尿器科

泌尿器科の診療の対象となるのは、主に次の3つの系統の臓器です。

  • 腎臓~尿管~膀胱~(前立腺)~尿道といった尿の通り道(尿路)に関連する臓器
  • 前立腺・精巣・陰茎などの男性生殖器
  • 副腎や副甲状腺などホルモンを作る内分泌臓器
泌尿器科

これらの臓器に起こる機能異常、腫瘍(悪性腫瘍“がん”や良性腫瘍)、感染症などを診療します。
他にも、患者さんの数は上記に比べると多くはありませんが、尿膜管疾患や、後腹膜腫瘍(腹部の脂肪・筋肉や脈管組織からできた良性及び悪性腫瘍)も診療対象です。
これらの臓器を総合的に扱うのは泌尿器科だけですので、薬による治療や内視鏡検査に代表される内科的診療も、手術に代表される外科的診療も行う診療科です。

泌尿器科の病気は、前記のように多岐にわたります。
尿に血が混じる、尿の出が悪い(尿意があるのに出ない)、わき腹や下腹部の急な痛み、陰部の痛み・脹れなどの自覚症状がある場合には、泌尿器科で早めに診断・治療を受けることが必要です。

一方で、自覚症状のない場合でも泌尿器科受診が必要な場合があります。健診や他疾患の検査目的でエコーやCT検査を受けた際に腎や膀胱などに異常を指摘される、血液検査で前立腺癌の腫瘍マーカー(PSA:前立腺特異抗原)が高い、検尿で異常を指摘されるなどの場合です。
これらは、重大な疾患が見つかることも少なくはないですし、正しく評価をおこなって問題がなければ安心できますので専門科である泌尿器科を受診してください。

どんな検査・治療を受けるのかイメージしにくい泌尿器科に行くようと言われると気が進まない方もいるかもしれませんので、当科では診断・治療の全体像がわかるような説明、個々の治療についてはメリットとデメリットがよくわかるような説明を心がけています。

当科の特徴

当科は2018年4月より外来・入院での治療を開始しましたが、2022年より診療体制を一新しました。新規手術機器・術式を導入、大阪大学医学部泌尿器科教室関連の高次機能病院をはじめ、特定分野で優れた実績を有する施設との連携を強化することによって、幅広い泌尿器科疾患への対応が可能となりました。

特に、前立腺・膀胱・腎臓などの“がん”の診断と治療、前立腺肥大症に対する低侵襲手術、腎臓や尿管にできた結石の内視鏡手術などの手術を中心として診療しています。

病院間の連携を強化したことのメリットは、当院の治療水準が高まることだけでなく、当院を通じて受けられる最適な医療の選択枝が増えることにあります。例えば、近年は手術支援ロボットを用いた手術が健康保険の対象となる疾患が増えましたが、当院にはまだ導入されていません。診療科責任者はロボット支援手術の指導医であり、2012年に日本で保険診療が認められて以来、執刀・指導・助手など数百例の手術に係わってきました。ロボット支援手術には大きな優位性があると同時に限界も熟知していますので、適応のある患者さんには、それぞれの分野で確かな技術の病院をご紹介いたします。(施設によっては、当院医師も手術に参加して治療を受けることが可能です。) 逆にこれらの施設でできない治療を当院にご紹介いただく場合や、応援医を要請して当院で対応できる手術も増えてきています。

当科が、診断・治療で特に重要視していることは、次の3点です。

  • 痛みは最小限
  • 迅速(検査・手術の待ち時間低減、受診回数の低減)
  • 低侵襲(負担の少ない治療)
① 痛みは最小限

泌尿器科での検査には、エコー検査や尿流量検査のように体に負担がない検査だけではなく、侵襲(痛みやダメージ)を伴う検査や処置が必要な場合もあります。
膀胱の内視鏡検査では柔らかい内視鏡を使うと、軽い麻酔でも大きな苦痛はないのですが、腎盂・尿管のカテーテル検査やステント留置、前立腺生検(針型の器具を用いて組織採取する検査)といった、比較的強い痛みを伴う検査でも設備や人員の関係で軽い麻酔で行わざるをえない施設も少なくはありません。

当院では安全・清潔な手術室で行いますので、腰椎麻酔(下半身麻酔、無痛)を選択可能です。

また、殆どの手術の麻酔は、麻酔専門医が行います。下半身麻酔であっても希望に応じて軽度の鎮静を併用することができ、眠っている間に手術を終わらせることも可能です。

② 迅速(検査・手術の待ち時間低減 受診回数の低減)

気になる症状があり心配なので病院を受診したのに、CTやMRIなどの画像検査が何週間も後にしか予約がとれない、やっと診断がついたのに手術の待ちに何週間・何か月もかかっていたのでは、ずっと不安なままです。

当院では、画像診断の検査枠を豊富に設けてありますので、殆どの画像検査は1週間以内に撮影できます。(条件により、受診当日に造影検査も可能)。

手術に関しても、定期の手術枠外でも柔軟に手術枠確保するなどして待ち時間の低減に努めています。

仕事等が忙しくてなかなか予定の空かない方、足腰が弱く通院負担の大きい方のためには、できるだけ検査を集約して受診回数が減らせるように調整します。

③ 低侵襲(負担の少ない治療)

薬で対処するか、手術するか、放射線治療を行うか? 効果に明らかな優劣がある場合や、選択枝が限られる場合にどの治療に決めるかは、そう難しくはありません。同様の効果で複数の選択枝がある場合、個々の患者さんがもつ他の病気や年齢・価値観を加味して方針を決めるべきであって、施設の設備や方針に固執してはいけません。当科では、ご希望の場合にはセカンドオピニオンや他施設で可能な治療についても案内したうえで、有効性の確立された低侵襲治療を提案します。

また、当院で受けられる先端治療の選択枝を拡げるための取り組みの一例として、尿路結石症では細径トラクトを用いた経皮的・経尿道的腎砕石術(ECIRS)を行っています。前立腺肥大症に対しては、北摂地域ではいち早く経尿道的前立腺水蒸気治療(REZUM🄬システム)、経尿道的前立腺吊上術(UroLift🄬システム)を導入しました。

恥ずかしいからと周りに相談できずに悩んでいたり、自分はもう年だから仕方ないとあきらめていませんか?
泌尿器科で受けた検査が痛かったと聞いたことがありませんか?
そのような方こそ、当科にご相談ください。

病気の説明

前立腺肥大症の説明
前立腺肥大症は男性の宿命
前立腺肥大症の概要

前立腺は膀胱の出口で尿道を取り囲むように存在しており、精液の一部を作る男性の生殖器のひとつです。前立腺の部分で尿道に精液の通り道が合流するので、ペニスからは尿も精液も出てくるのです。前立腺の肥大は30歳代から始まり、50歳で30%、60歳で60%、70歳で80%、80歳では90%に見られ、男性の宿命といえます。
前立腺が肥大しても、特に症状の出ないこともありますが、膀胱の出口を圧迫して排尿に様々な障害を起こしてしまうことがあります。
前立腺肥大症の症状は、「尿が出にくい・勢いが弱い・排尿途中で尿が途切れる・排尿するためにお腹に力をいれなければいけない」といった排尿症状だけでなく「頻尿(特に夜間に排尿のために目が覚める)、急に尿がしたくなって我慢しにくい(尿意切迫感といいます)」といった蓄尿症状、「残尿感、排尿後に尿がしたたり落ちる」などの排尿後症状があります。これら不快な症状だけでなく、前立腺肥大症が進行すると重篤な感染症や、尿が出せなくなったり(尿閉)、尿から排出される老廃物が体に溜まってしまう(尿毒症)など命にかかわるような状態に陥ることもあります。

前立腺肥大症

前立腺肥大症でなくても排尿の異常はおきる

前立腺肥大症と同じ症状は、膀胱の機能がうまくいかない場合(脳卒中やパーキンソン症候群など)や、心臓・腎臓の機能が悪いために夜間の尿量が多くなってしまうこと、尿の通り道の感染症や結石による刺激、膀胱や前立腺にできた「がん」、誤った生活習慣でも起こります。とくに生活習慣では、就寝前にアルコールやカフェインを摂る、「血液がサラサラ」になると妄信し過剰に水を飲んでいる方がおられ、簡単に改善できることなので注意する必要があります。

外来ではどんな検査が行われるか

問診票(国際前立腺症状スコア)、尿の勢いと残尿量の測定、検尿と血液検査(がんが無いか調べます。前立腺特異抗原:PSA)、腹部エコー(前立腺の形態・大きさ、膀胱の状態や結石の有無の評価)を行うのが基本です。
必要に応じて前立腺の触診や、尿道~膀胱までの内視鏡検査も行います。
前述のように、他の原因がないかについても検討します。
これらの結果を総合して、治療方針を決めます。

どんな治療法があるか
  • 薬による治療
    • α1受容体遮断薬、PDE5阻害薬
      前立腺の緊張を和らげることで尿道の圧迫が解除されて尿の勢いを改善します。また、膀胱の緊張も和らげるので頻尿を改善する効果もあります。
    • 5α還元酵素阻害薬・抗男性ホルモン薬
      男性ホルモンが前立腺に与える影響を弱くして、前立腺を縮小させます。
      速攻性はなく、月単位の時間をかけて前立腺は3割ほど縮小します。
    • その他、頻尿を改善する薬剤、漢方薬などを使用することもあります。
  • 手術治療

    薬物療法では十分に症状が改善しない場合には手術治療を考慮します。
    前立腺肥大による膀胱出口の抵抗が強いと、膀胱に負担がかかります。この状態が続くと膀胱の機能が低下していきます。初期は頻尿や尿意切迫などの症状がでますが、悪化が進むと膀胱の収縮力が低下していき、終には尿を出せなくなってしまいます。(低活動膀胱といいますが、もとに戻すことはできません。)そうなる前の適切な時期に手術を受けられることをお勧めします。

    最近までの手術の本質は、“大きくなった前立腺の内部を除去(削り取る 又はくり抜く)することで尿の通り道を拡げる“というもので、そのための方法に様々な工夫がなされてきました。効果は優れてはいますが、出血の問題、痛みや性機能関連の合併症があること、全身状態に問題のある患者さんは受け難いなどの課題がありました。

    2022年より、まったく異なる思想で行う革新的な低侵襲治療(≒からだの負担が少ない)が日本でも保険診療で受けられるようになりました。

    • 前立腺の内部を除去する治療
      • 経尿道的前立腺切除術(TURP):当院で受けられます。

        経尿道的前立腺切除術

        尿道から内視鏡をいれて、内側から電気メスで前立腺を少しずつ削りとって膀胱の出口の狭窄を解除します。前立腺は血流が豊富なので出血量が多くなりがちで、特に大きな前立腺の患者さんは輸血が必要なこともありますので、前立腺のサイズが小さめの患者さんにはよい適応です。
        年月が経って再手術が必要なことがあります。

      • 経尿道的前立腺核出術(TUEB):当院で受けられます。

        経尿道的前立腺核出術

        尿道から内視鏡をいれて電気メスで手術しますが、人体の構造上で剥がれやすい部分を外して前立腺内部をくり抜く手術です。(ミカンの皮をむくようなイメージです。)出血は大幅に減少し、大きな前立腺肥大でも安全・確実に前立腺組織を摘出できる方法です。
        これまでに執刀及び手術指導した患者さんの出血量は、多くて献血一回分相当ですので、輸血を要した患者さんはありません。

      • ホルミウムレーザーを用いた内視鏡手術

        前述のTURP、TUEBとほぼ同等の手術を、電気メスの代わりにレーザーを使って行うものです。 術者の技量に依存しますが、電気メスを用いた手術より時間がかかり、止血力が弱いこともあります。

      • ツリウム等の新規レーザーを用いた内視鏡手術

        ホルミウムレーザーとは違った波長をもつレーザーを使って手術をします。レーザーのエネルギーが力を発揮する組織の種類や深さが異なります。出血が少なく、高出力が出せるので他のレーザー手術より短時間で終わります。抗血栓薬を休薬せずに手術を受けられる場合もあります。

      • 開放手術

        過去には大きな前立腺の患者さんに行われていましたが、内視鏡的手術の進歩により、特殊な状況を除いて行われることはありません。

    • 革新的な新しい低侵襲治療:当院で受けられます。
      • 経尿道的前立腺水蒸気治療(REZUM🄬治療):当院で受けられます。(2023年7月時点で大阪北部での導入施設は当院のみです。)

        経尿道的前立腺水蒸気治療

        尿道を通した内視鏡を用いた手術をするのですが、専用の機械を用います。前立腺に針を刺し、その先端から高温の水蒸気を射出します。水蒸気は前立腺の内部で拡がり、1回の処置で約1cmの範囲の前立腺組織が熱変性します。変性した組織は1-3か月ほどで吸収され前立腺が小さくなっていきます。手術時間は、10分ほどで出血は殆どありません。性機能の影響も少ない手術です。欠点は効果が実感できるのに少し時間がかかることです。
        保険診療で受けられるには、従来の手術が受け難い患者さんという制約があります。

      • 経尿道的前立腺つりあげ術(UroLift®治療):当院で受けられます。

        経尿道的前立腺つりあげ術

        尿道を通して内視鏡を用いた手術をするのですが、専用の機械を用います。
        小型のインプラント(図を参照)を使って前立腺を引き縮めます。すると、前立腺の内部より外側が硬いので前立腺の内部にある尿の通り道が開きます。速効性があること、性機能への影響が報告されていないことが特徴です。欠点は前立腺の大きさや形状によって対応が難しいことです。
        保険診療で受けられるには、従来の手術が受け難い患者さんという制約があります。

経尿道的水蒸気治療(REZUMシステムを用いたWAVE治療)

Rezum 患者用パンフレット (pdf)

治療イメージの動画(説明は英語ですが、画像だけでも参考になります)

https://youtu.be/BPMOVo5K5n4

経尿道的水蒸気治療

経尿道的前立腺吊上術(UroLiftシステム使用)
尿路結石症の説明

中等度の大きさの結石の治療:TUL(経尿道的腎尿管砕石術)公開準備中

大きな結石の治療:ECIRS(経皮的 及び経尿道的 腎砕石術)公開準備中

尿潜血が出ている方の説明

尿は腎臓で血液を濾過(ろか)・濃縮等を行うことで作られ、尿管~膀胱~尿道を通って体外に排出されます。この過程のどこかで赤血球(または鉄分)が混入すると尿潜血が陽性になります。腎で尿が作られる過程に原因がある場合(糸球体性血尿)は内科が診療し、尿が運ばれる過程に原因がある場合は泌尿器科が診療します。
泌尿器科の範疇では、悪性腫瘍(がん)、尿路結石、膀胱炎などの感染症、腎血流の異常など病気など原因は様々です。特に40―50歳ごろから悪性腫瘍の頻度が高まります。

悪性腫瘍としては膀胱癌、腎盂尿管癌、腎癌、前立腺癌などの可能性が考えられます。
尿路結石は、腎・尿管・膀胱結石のどこにもおこります。腎結石や尿管結石では痛みがでたり、膀胱結石では頻尿や下腹部の違和感などの症状を伴うことも多いのですが、何も症状がないこともあります。
膀胱に菌が入って膀胱炎になった場合も血尿が出る事があります。
女性では、婦人科臓器からの出血が検尿に混入して尿潜血を指摘される場合もあります。

一方、毎年健診にて尿潜血を指摘される人も多く、特に中年以降の女性では20-30%で尿潜血陽性が出ます。このような場合には、精査をしても明らかな異常が見つからないことの方が多いです。

負担の少ないとしては、検査は検尿(顕微鏡による血尿の確認)、尿細胞診(悪性細胞の有無をチェック)、PSA(前立腺癌の腫瘍マーカー)や超音波検査などがありますが、いずれも診断能力には限りがあり、大きな異常がないかを簡易に調べるものと考えてください。
尿道~前立腺(男性のみ)~膀胱の異常を調べるうえで、特に重要な検査として膀胱の内視鏡検査があります。胃カメラ等の内視鏡と同様の柔らかい電子スコープ(軟性鏡)ですが、太さはずっと細い専用の機器を使い、通常は数分で終わります。
腎臓から膀胱の精密な検査として、CTやMRIなどの検査があります。高精度の検査のためには造影剤という検査薬を注射しながら撮影するのが好ましいのですが、腎機能が悪い方やアレルギーのある方にはできません。

以上を参考に、どの程度の検査をうけられるかお選びください。

  • 低侵襲な検査:尿細胞診、腹部超音波検査、PSA(前立腺癌の腫瘍マーカー)
  • フルセットの検査:造影CT、膀胱鏡、尿細胞診、PSA(前立腺癌の腫瘍マーカー)

難治性過活動膀胱に対するボトックス治療

https://hainyo-onayami.jp/oab/treatment/botulinus.html

膀胱尿管逆流症に対する経尿道的注入療法(デフラックス注入)公開準備中

記サイトもご参照ください。

対象となる主な病気

泌尿器悪性腫瘍(腎癌・腎盂尿管癌・膀胱癌・前立腺癌・精巣癌・陰茎癌など)
排尿障害(前立腺肥大症、神経因性膀胱、尿失禁など)
尿路結石症
尿路感染症
副腎内分泌疾患、小児先天性尿路奇形、勃起不全
そのほか泌尿器および男性生殖器疾患全般

診療担当表

  曜日 曜日 曜日 曜日 曜日 曜日
午前 7診:武田 7診:武田 7診:山本 7診:石津谷 7診:武田
午後
 
  午前  9:00~12:00(受付 8:30~11:30)

  ※ 午後は休診となります.


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武田:11月30日(土)午前

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泌尿器科部長

部長 武田 健
平成16年 大阪大学医学部 卒業
泌尿器科専門医・指導医
泌尿器腹腔鏡技術認定
泌尿器ロボット支援手術プロクター(指導医)認定
日本内視鏡外科技術認定
日本がん治療認定医
緩和ケア研修会修了
非常勤 山本致之(大阪大学大学院医学系研究科 泌尿器科)
非常勤 石津谷 祐(大阪大学大学院医学系研究科 泌尿器科)

当科の設備

診断機器に関しては、ハイビジョン・デジタル方式の軟性膀胱鏡装置、高精細の超音波機器、3テスラMRI(全身MRI検査(DWIBS法)も可能)、マルチスライスCT等があります。

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